ケース③スピード違反の赤切符で前科を免れた事例
事案の概要
医師である相談者は、一般道路の指定速度を30㎞/h超過して走行したため、赤切符を切られ、交通裁判所から呼び出しを受けていました。
そのまま略式裁判を受けると前科がつき、戒告などの行政処分を受ける可能性があるので、なんとか不起訴にできないかというご相談でした。
事務所の対応
相談者が速度を出したのは、不審な車両が後方から急接近してきたため、安全な距離を保つためにやむを得なかったという事情がありました。また、相談者は当初から速度違反を認め、深く反省し、今後は交通法規を遵守することを誓っていました。
そこで、交通裁判所では略式裁判を選択せず、不起訴処分を目指して弁護活動を行う方針を定めました。
具体的には、相談者に反省文の作成と贖罪寄付をお願いしました。また、再犯防止を徹底するために、ご自身の自動車を売却処分してもらいました。
そして、検察官に対して、これらの情状事実に加え、相談者の速度超過にはやむを得ない事情があったこと、速度超過が比較的軽微にもかかわらず前科がつけば医師としての将来に深刻な不利益が生じかねないことなどを指摘した意見書を提出しました。
その結果、不起訴処分を得ることができました。
ポイントの解説
法律上、最高速度を超過した場合、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます(道路交通法22条、118条1項1号)。ただし、一般道路で速度超過が30㎞/h未満、高速道路で速度超過が40㎞/h未満であれば、交通反則通告制度に従って反則金を納付することで刑事訴追を回避することができ、前科もつきません(同法128条2項)。
他方で、一般道路で30㎞/h以上、高速道路で40㎞/h以上の速度超過の場合、交通反則通告制度の対象外となり、基本的には刑事裁判にかけられることになります。
本件は一般道路での30㎞/hの速度超過で、法律の建前上は刑事訴追を免れない状況でしたが、あきらめずに情状弁護を尽くしたことで、不起訴処分を獲得することができました。
医師が刑事裁判で罰金以上の刑に処されると、医道審議会での聴聞手続きを経て、戒告、医業停止、医師免許取り消しなどの行政処分を受けることになり、キャリアに大きな影響を与えるおそれがあります。
起訴を免れるためには、早期に弁護方針を立て、適切な弁護活動を行うことが重要です。刑事訴追のリスクがある場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
この記事を書いた人
弁護士:石原明洋
神戸大学法科大学院卒。
病院法務に特化した外山法律事務所に所属して以来、医療過誤、労働紛争、未収金回収、口コミ削除、厚生局対応、M&A、倒産、相続問題など幅広い案件を担当。医療系資格を持つ弁護士として、医療機関向の法的支援と情報発信に尽力している。